翌々日には試作2号、3号も作った。それらは実際のハイネックセーターを切って作ったりもした。寒い日には、それを首につけて外へ出掛けた。他人からは予想通り、普通のハイネックセーターだと思われていた。そこで、屋内に入った際に、それをここぞとばかりに瞬間に取ってみせた。
その様子を目撃した知人や友人は、「まるで手品でも見たようだった」と言っていた。 また、「何処に売っているのか教えて」という声も得た。中には「あなたはコメディアンですか?」という声もあった。 それは自分が試作したものであり、売っているものではないと言うと、「じゃ、自分にも作って!」と言われることが多かった。特に女性のほうが欲しがっていた。
そこで、「これは売れるのは間違いない」と思った。また、こういう様子も売り込み文章に書いておいた。多くの人に発明を見せることで、共通した反応を知ろうとしたのだが、これが結構、楽しみでもあったのだ。このように、発明の醍醐味はそれを形にするときでもある。あるいは、アイデアを形にする醍醐味ともいえる。そして、アイデアを形にするには、そのための思索と試作の過程が必要である。そのためにも、落ち着いた気分でジックリと集中てきる場(部屋)を持つことだ。
1996年の3月4日のことである。知り合いの若い女性に「いま、不便に思っていること、そして、それがどうなったら便利になると思うか」と質問をしてみた。すると、「爪に貼るシールが物に擦れて剥がれたりしやすいので、それが剥がれないものがあればいいと思う」という答えが返ってきた。爪に貼るシールとは、当時、若い女性の間で流行りつつあった、爪に貼るお洒落なシールのことである。それには色々なマークや彩色されたイラスト、デザインなどがあった。 いまの爪シールは、擦りつけて貼るものが主流で、剥がれにくくなっているのだが、当時の爪シールには剥がれやすいものもあったのだろう。
しかし、予期しない答えに、思わず詰まってしまった。本当は、日常の不便さの中に、発明のヒントを得ようとして、質問したのだった。若い女性の間で流行っている、爪用のシールの不便さを聞いたところで、自分にはどうしようもないな、とも思った。ところが、次の瞬間、閃いた。
「シールだから剥がれるのだ。だったら、シールでない形で、マーク(模様)やイラストが爪に付けられればいい。それでも、爪にシールを貼るところが受けているのであれば、逆にマーク(模様)とイラストの部分以外をシールにしたらよいのでは・・」模様をシールにするのではなく、模様以外の部分をシールにする、逆転の発想である。 つまり、模様の部分だけが鋳型のようにくり抜かれており、周りの部分がシールであれば、これを爪に貼り、その上からマニキュアなどで色を塗り付ければ、シールではないマニキュアで塗られた模様が浮かびあがるはず。ステンシル的な発想というわけだ。
このアイデアに、またまた試作に没頭することになり、さっそく「試作の部屋」で作業を開始した。文房具で買ってきた爪の大きさくらいの無地のシールに、カッターで色々な模様(ハート型、星型、英語のアルファベットなど)をくり抜き、それを自分の爪に貼ってみた。ところが、マニキュア液が無かったことに気がつき、仕方無く、修正液を塗り付けてみた。
乾いてからシールを剥がすのは、マニキュア液でも同じはずだ。そうこうするうちに修正液が完全に乾いたので、シールを剥がしてみた。すると、白色(修正液の色)であったが、くっきりと綺麗に望みの模様が爪に浮かび上がっていたので、これは商品化できるかもしれない、と思うに到った。
試作品をその女性のところへ持っていき、こんどは本物のマニキュアをつけてもらった。結果は、予想以上に良い出来ばえだった。そこで、さっそく特許出願書類と売り込み文章などを作成しはじめた。特許願書の発明者の欄には、この発明のヒントを与えてくれた、女性の名も連名で記しておいた。
しかし、こんな簡単な発明でも、権利がもらえることがあるのだろうか、あるいは、発明を買ってくれる会社などあるのだろうか、という疑問も頭をよぎった。それほど簡単に、試作品も、特許書類も作成できたので、もし、こんなものでロイヤリティがもらえるとしたら、それこそ「悪いなぁ」なとど考えてしまったのだ。
]]>実は、この3つは誰にとっても最初は難しいものであり、N氏に限ったことではない。N氏の障害は、この「三重苦」そのものというよりも、自分の可能性に制限を与えている「考え方」にこそ、あったのだ。そこで、N氏の発明がスムーズに行くお手伝いをすることになった。まず、特許出願したいというアイデアが、実際に考えているだけの効果があるのか、まずは試作品を作ることを勧めた。出願はそれからでも遅くはないし、そのほうが書類が作成しやすいのだ。
発明の内容は、浮袋とかモップなどの改良が中心であったので、いわば「小発明」であった。そこで発明試作のコツを教えたりもした。四苦八苦しながらも、なんとか試作品を自分で作り上げていた。小規模ながら類似品調査(デパートの同一商品調査、また特許庁の文献調査)も、説明した通り、行っていたようだ。
出願書類に関しては、作成のコツやアドバイスを与え、その後、とうとう完成したと言ってきた。そのとき、N氏は私から受けたアドバイスによって、「いままでずっと目の前に立ちはだかっていた大きな壁(発明を世に出すうえでの大きな障害)が、簡単に崩れさった」と語ってくれた。
そして、出願と同時に、発明と関連分野の会社に売り込みも始めたのだが、反応はいまいちだったようだ。それでも、自分の力で、発明を試作したり、売り込みができるようになったことをとても喜んでいた。その後の彼は、何かアイデアが浮かんでも、前のようにアイデアが浮かぶごとに連絡をしてくることは無くなった。発明の試作、手続き、売り込みの大体の、基本的な流れが分かったのだろう。
Yさん(婦人)の場合も、以前から小物発明的な趣味を持ちたいと思っていたのだが、やはり試作と特許の作成、売り込みに関して、いつも躊躇していたため、なかなか、それ以上前に出ることがなかったという。ところが、発明の試作や権利化について、ちょっとアドバイスしただけで、もう水を得た魚のようになり、それまでは頭の中にしかなかったアイデアを次から次へと、形にするようになった。
Yさんのアイデアを、発明サンプルとして作るのを私も手伝っていた。最初にも述べたように、発明サンプル(つまり試作品)がないと、なかなか企業には売り込みが掛けにくいのだ。一つ作ってしまえば、あとは写真に撮って、いろいろな売り込み方ができる。私の手には追えない複雑な試作には、発明サンプル・クリエイターという専門家にも頼んだりした。
特許書類に関しては、最初、とても難しい書類というイメージがあったようだが、私がお手本に書いた書類を読ませると、「これまで難しくて手が出ないと思っていた特許書類だったけど、これを読んでいても、なんだか楽しいイメージが浮かんでくるから不思議な気分になる」ということで、その後は、書類作りにも徐々に親しめるようになっていった。
Yさんには小さな娘さんがいたが、この子をイメージしながら、「改良したおしゃぶり」「履きやすく、脱ぎやすい子供用の靴」「オリジナル人形」などを作っては、実に生き生きとしながら、企業などへ提案して回った。そのせいもあってか、ある靴メーカーの専務から、「提案された子供用の靴が採用できるか検討している」という返事をもらったという。今後が楽しみである。
Oさん(主婦)は、振り子の形をしたイヤリングを作って、それを自主製作販売しようと考えている。私もそれを手伝って、ある雑誌の紙面などでPRをしてみた。さらに、縁起物を専門に扱っているお店で、試験的に置かせてもらえないか交渉してみたら、すんなりオーケーされた。後はOさんのほうで商品として見栄えのよい「振り子型のイヤリング」ができるのを待つばかりである。
]]>だから、アイデアは、単にアイデアのままにしておかないことだ。たしかに、形のないアイデアだけでも、便利なものはたくさんある。「生活の知恵」とか「裏ワザ的発想」などがそれに当たる。でも、それはまだ、単なる「ノウハウ」であるにすぎない。それでは形がないので、商品化はできない。至極当たり前のことだ。
そこで、あえて「形にならないか」を真剣に考えてみることが大事だという話を、これまではしてきた。そして、アイデアを形にした「試作品」ができたら、こんどは「売り込み」の段階へ進む準備をするのが普通の流れだ。準備とは、「特許の先願調査」や「類似品調査」、それに「売り込み会社の選定」などを指す。
どんなに簡単な発明であっても、アイデアが優れていれば、それを惚れ込んでくれる会社が出てくるもので、そうなると発明が採用される見込みも大きくなる。発明が高く買われれば、当然、高収入も得られることになる。だから、当初のアイデア(発明)が、自分自身のために生み出されたものだとしても、もっと積極的に世の中にアピールしてもよいのだ。いや、すべきなのである。
それが万人にとっても、有益な効果があり、さらにこれまでに知られていなかった原理(構造)や方式のものであれば尚更だ。アイデア(発明)を自分だけのために使っているのは、一種の罪でさえある(?)。といったら、少々大袈裟かもしれないが、とにかく、アイデアの権利化手続きを済ませ、それを売り込むことは、結局は他人の生活向上にも繋がり、人類に貢献することにもなるのだ。
]]>ところで、おもしろいと思うのは、いまの若者は、自分たちがキャラクター化しているということだ。それは「個性的」というのとはちょっと違い、ほんとうに漫画やアニメの中のキャラのような振る舞いであるのだ。それだけに、人間関係にも、あまりドロドロしたものはないようで、サッパリしている(というか、冷めている)。その分、分かりやすくてよいのかもしれないが・・・
脱線したので、話を戻そう。オリジナルのキャラクターは、企業のキャンペーン用やマスコット商品としても、もてはやされている。それぞれの会社事業、またはイベントなどの特色やコンセプトが、キャラクターを通して人々に伝わることが目的だ。だから、キャラクターには会社なり、イベントのテーマ(コンセプト)に沿った、イメージが与えられることになる。
このように、キャラクターには、いろいろなテーマが与えられているわけだが、それでも共通したイメージがあることが分かる。それは、可愛くて(カッコよくて)愛嬌のあるもの、それでいてちょっと奇妙きてれつ、奇抜なところがあり、空想的でもある。さらに健康的で、好感のもてるもの・・
だいたい、こういうイメージは、どのキャラクターにも共通して見られるものだ。「カワイイ(カッコイイ)、キバツ(キテレツ)、クウソウテキ、ケンコウテキ、コウカン」ということで、「カキクケコ」。だから、これを、オリジナル・キャラクター作成時に「カ行の基本イメージ」として参考に使うこともできる。
特に、キャラクターに、奇抜さという条件は大事だろう。目から鱗が落ちるほどの、奇抜さが好感さとともに、うまくキャラクターに表現できていれば、なかなかのものだ。キャラクターは、「ノベルティ・グッズ」(あるいはプレミアム・グッズ)などに添えるものとしても応用できるだろう。
ノベルティ・グッズとは、銀行で新規に口座を設けたり、あるいは新装開店の店に入ったりしたときにもらえる、ボールペン、ファイルケース、ライター、タオル、テレカなど、ああした記念品のようなもののことだ。でもよく見ると、それには銀行名や店の名前・住所などが記されているので、宣伝(PR)も兼ねていることになる。
こうしたノベルティ・グッズに添える、アイデアを求めている会社も多いのだ。あるいは、まったくのオリジナル販促用商品を作って、配っていることもある。とにかく、ただで配布する何らかのグッズには、店の名前や住所を記しておくので、なるべく、常に携帯、使用されながら、しっかりと名前を覚えてもらいたい(そして、周りにも宣伝してもらいたい)という思惑がある。
しかし、無料で配るものなので、あまり製造コストを掛けられず、低コストで作れる簡単なものが望まれる。といっても、それなりに質の良さも求められるのだ。 そこで、これもまた、「簡易なもの、記憶に残るもの、クォリティの高いもの、携帯できるもの、コスト性のよいもの(低コスト)」と纏めてみた。「販促用グッズ・カ行の条件」というところか。
これから何か小物発明を、と考えている人は、まず、こうした「ノベルティ商品」のアイデアを考えてみては如何だろう? それも、まずは売り込みをしようとする会社の分野で、その分野に相応しいキャラクターを考えてみるのである。それをデザイン化したカード(会社や店の名前などが記入できるもの)や、本にはさむ栞などもよいかも。
]]>それでも、相手の特許権利の一部にでも触れていれば、真似でなくても、やはり相手から抑えられてしまうことはある。企業間では新製品開発を巡って、こうした特許上の権利を主張しあったりするのは日常茶飯事のことであり、そう珍しいことではない。特許紛争は世界的規模にまで拡大しているのだ。
個人が考え出したアイデア品が、偶然、他の個人(あるいは企業)のアイデアとも似ているといった場合、権利が認められるのは、日本の場合は「先に発明をしたほう」ではなく、「先に特許の出願をしたほう」、つまり出願日の早いほうに軍配があがる仕組みになっている。
つまり、たとえ企業(組織)との間で、発明の権利を巡るトラブルが発生したとしても、それは出願を先に済ませている方に認められる。組織の方が個人より強いということにはならない。これを「先願主義」というわけだ。そこで、自分のアイデアを発明品として、世にデビューさせる前には、ある程度の「類似品調査」や「先願調査」をしておいたほうがよいのだ。
これには、専門の特許調査会社や、あるいは個人でも調査を引き受けてくれるところがあるのだが、調査費用はバカにならない。専門的な特許の先願調査ともなると、特許庁のコンピューターに収められている過去の特許データの中から、調査の対象になる分野や年代、国別など、項目ごとに、詳細に調べたりもする。
パソコンが普及する前には、特許庁の膨大な資料(特許の書類の山)から、こうした気の遠くなるような作業をしていたわけだ。いまはコンピューター化されていて、作業効率も上がったが、それでも膨大な過去のデータから、調査項目をこなしていくのは、それなりに大変である。
普通の企業が特許調査を1件頼むとして、だいたい安くても2~3万円はするという。特許調査の内容にもよるが、高いものではウン十万~ウン百万円もすることがある。ただ、それが会社の命運を掛けた大事な調査になることもあるのだから、決して高いとばかりはいえない(調査する方も大変だろうし)。
しかし、小物発明の場合は、そんなにお金を掛けてしまうのは本末転倒。たとえ、ウン千円~ウン万円の調査費用だとしても、数件ともなると、やはり考えものだ。
]]>それに、いくらコンピューターで調べられるといっても、つい最近に出願されたものは、まだコンピューターに登録されないために、調査の対象から外れてしまうこともある(過去3ヵ月前までに出願されたもの等)。もし、見つけようとしている「同等か類似の発明」が、その中にあれば(最近に出願されていれば)、どんなプロの特許調査士でも、それを探すことはできない。
ところで、これまでは、自分で先願調査をする場合は、特許庁か(社)発明協会(各支部)、あるいは広報の閲覧ができる図書館などに赴いて、そこに置かれている「特許公開広報」などを丹念に調べあげていくか、または特許庁のパソコンを使いながら、調べあげていくのが、「個人でもできる先願調査」の典型的なスタイルであった。
もちろん、いまでもその調査スタイルは有効であるし、それに、特許庁や発明協会の相談係員は、不明な点に親切に答えてくれたり、質問にも応じてくれるので、はじめて調査をする人にはむしろ、この調査スタイルが向いているかもしれない。
しかし、いまはわざわざ出馴れていない特許庁などに赴かなくても、通信が可能なパソコンがありさえすれば、自宅にいながらにして、特許庁のパソコンで扱うのと同様の操作で、過去の特許に関する「先願調査」もできるようになった。
さらに、99年の春からは、「特許電子図書館サービス」という、インターネットを利用した特許公報類の閲覧サービスも開始された。これは過去の特許データ量が、これまでに比べると、断然豊富になり、より充実された形となった。
特許庁のホームページと直に繋がっているので、これまで特許庁に行きたくても行けなかった、遠方の人にとっては、正にありがたいサービスである。だから、いまはパソコンを用いて、こういうサービスを利用しさえすれば、自宅のまま先願調査もできる時代となったわけだ。それに、自分で調査を行えばその分、勉強になるし、第一、金も掛からないですむ。
]]>もう一つの類似調査方法としては、「百貨店(デパート)などの同分野コーナー」を実際に見て回る方法がある。小物発明の類似商品調査としては、この「通販」と「デパート」を活用するくらいで十分だろう。その次は、特許の先願調査をする。
特許の先願調査をしていて、似たものが見つかった場合は、むしろ、「この類似発明の内容を参考にしてやろう」ぐらいの気持ちで前向きに利用することを考えるべきだ。似ていても、発明の核心部分(特許の請求項)が同じものでなければ、権利が重なることはない。一見、構造は似ているが原理が違うということはよくある。
とにかく、似ている発明はなにかと参考になる。似た発明の内容をヒントに、自分の発明を発展させられるし、「この発明と自分の発明とは、この点で明らかに異なる」という部分も見出せる。それが見出せない場合は、「では、どうすれば違いを強調できるか」などを考えるようにする。その点は有利でもある。
さらに、特許出願書類を作成するうえでも、似た発明の文章を参考にできるという利点がある。似ているゆえに、文章作成上も多くのヒントがあるのだ。このように、似た発明が見つかることには利点もあるのだ。むしろ、似た発明は是非とも見つけるようする。
ただし、考えていた発明と細部に渡って、あまりにも似すぎている場合(同じようなものだったら)は、もう既に先願権があるものを発明しても仕方ないので、その場合はあきらめることが肝心だ。むしろ、無駄な労力を掛ける前に、見つかったのが幸いといえよう(重複発明を避けられたので)。
ともかく、先願調査をしていて、非常によく似た発明が見つかっても、このように前向きに取り組みたい。調べてみて、権利が重ならなければ、その内容を参考に使うこともできるのだ。
]]>といっても、我々の時代における発明とは、過去に発明されたものを基にして、それらを応用したり、改良したものが、ほとんどである。基礎的な原理や構造の発明は、もうほとんど出尽くしたとみる学者もいるようだ。たしかに、技術的(構造的)に、まったく新しい原理の発明が、今後も生み出されていくと考えるのは、なかなか難しいことだ。これからもたくさんの特許が出願されていくことは間違いないことだが、それらの大半は、いわば(過去の発明の)「応用発明」「改良発明」ということなのだ。
その辺の事情は、小物発明に関しても同様である。生活用品の多くは、ずっと昔から知られていた「ある基礎的な発明」を改良したり、一部改善したり、あるいは組合せたようなものばかりだ。小物発明の世界では、改良のまた改良、あるいは一部改善といった、改良型の発明が特に多い。
たとえば、最初にカミソリそのものの発明があって、その後はずっと、より安全な(より使いやすい)カミソリの改良、そのまた改良といった具合に、続いてきている。「消しゴム付き鉛筆」を最初に思いついた人は、鉛筆と消しゴムという別々の発明を組み合わせることで、さらに新たな発明製品を世に出せたわけである。
ここで何が言いたいのかというと、小物発明をこれから何か考えてみようと思う場合、最初から、新しい原理や構造が必要になるような大それた、小物発明を生み出そうとするよりは、もうすでに市場に出回っているものをよく観察して、それをもとにデザインを改良したり、何かを付加したりと、考えるほうが効率がよいということだ。そのことで別の効果が生まれたとか、製品の質が向上したと分かれば、それはそれでスゴイことだ。新しい商品的価値も見出せるかもしれない。
いろいろな電化製品のメーカーがあるが、たとえばテレビにしてもパソコンにしても、それぞれの特色はあるとしても、機能や効果には大して差がなくなってきている。それはどの製品(商品)にもいえることである。すると今後、消費者は何を基準に、購入する商品を選択しようとするのか。
値段をはじめ、性能や効果にも、それほどの違いがないとすると、デザイン(外観)や色彩といった、効果とは直接関係がないものも、選択の基準になるだろう。同時に、付加価値が高いほう、質(クォリティ)の高いほうを選ぶのは当然のこと。つまり、今後はますます、ソフト面のアイデアが重視される傾向にある。
こういう観点から、既成商品を見回りながら市場調査(商品調査)を行うと、小物発明になるヒントも見つかりやすいし、すでに着想している発明がある場合でも、今後の発展の参考になるだろう。単に、類似品探しだけを目的にしていると、大事なヒントが拾えなくなってしまう。
ちなみに、基礎になる発明に何かを付加して便利にした、使いやすくした、という場合、本来、それは「考案」と呼ばれる。そして、「考案」であれば、本来それは「特許」ではなく「実用新案」の対象となる。ただし、ここ最近は、小物の改良発明にしても、「特許」のほうで出願される傾向にある。大発明に対して、小発明という言葉もあるが、小物発明は「考案」的な発明であり、あるいは、従来の「考案」そのものともいえる。
]]>たとえば、阪神大震災の後は、防災グッズが飛ぶように売れた。それに伴い、普通ではそれほど売れないような、防災に関する小物発明も売れるようになった。女子高生の風変わりなファッションや現代のスタイルが、マスコミで盛んに取り上げられるようになると、それに拍車を掛けるような奇抜なアクセサリーやファッショングッズも飛ぶように売れた。
携帯電話やPHSが爆発的に普及するのに伴い、さまざまな付属品やストラップに付けられるアクセサリーの類が売れた。「今後は高齢者で世の中が溢れる」とマスコミが報じると、高齢者向けグッズや介護用品などが盛んに売れるようになった・・
要は、社会を構成する人々の意識の調査こそが、重要といえる。大衆の心理をつかめるものだ。だから、ヒット商品につながるアイデア品に関する市場調査は、そのまま、時代の先を見越したうえの、「人々の意識調査」ということにもなる。
そう考えると、あの「ダイエットスリッパ」などはまさに、グッドなタイミングで商品化されたものだといえる。当の発明者は意識していなくても、あれは社会背景にダイエットブームと健康ブームが押し寄せていたときのものだった。
過去にヒットしたアイデア商品も、このように、そのときの社会が求めていたものに、うまく合致したという背景がある。さらに、「ダイエットスリッパ」や「ベビーカウボーイ」は共に、「デザインの奇抜さ」と「ユーモアさ」を兼ね備えている。
遊び心が滲み出ているのだ。現代人には、それが「心のオアシス」的にも映ったのかもしれない。そして、こういう要素こそが、小物発明のよさなのだ。また、そこが企業からはなかなか出てこない「奇抜な発想」にもなっている。
ヒットするアイデア品を発案する発明者自身が、概してユニークでおおらかな精神の持ち主であることが多いようだ。そのことがまた、提案された会社の社外アイデア担当者の気持ちをつかむのだろう。担当者も人間である。提案されたアイデア品に多少の欠陥や欠点を意識していても、発明者の人柄(意気込み)に惚れ込めば、「あの発明者なら今後も、いろいろなアイデアを飛ばしそうだ」とか「多少の欠点はなんとか、うちのほうで改善してでも、世に出す価値があるだろう」など、考えることもあるという。
ということは、売り込みのときには、発明だけではなく、自分をも売り込むというのが一つの手になる。つまり、社外アイデアの担当者に、好感を持たせるような工夫もある程度は必要ということだ。ただし、下心みえみえは逆効果。さり気ない、気遣い、心遣いが大事というところか、売り込みも案外、デリケートなものなのだ。
担当者の身になって考えてみる、というのも手だろう。自分がこの発明を提案されたら、どう思うか、また発明家の情熱なり意気込みを感じられるだろうか、と。なんにしても、発明を提案する際の売り込み文章には、あまり多くのことを書かないこと。冒頭の挨拶も簡潔に。非常に丁寧な挨拶でも、それが延々と続くと、忙しい担当者はむしろ嫌気さえ、さすだろう。
発明の内容(構造、効果)も必要最低限にとどめる。発明の効果が幾つかあるのなら、箇条書きにするとよい。そして、大事なことは、その発明の試作品の写真か、あるいはイラストを添えること。これは、発明の内容を書いた文章を補うと同時に、視覚的イメージがハッキリするからだ。場合によっては、写真よりもイラストのほうが全体的なイメージを伝えやすいこともある。要は相手に分かりやすい方法を取ることだ。実は、こういう売り込みのスタイル自体が、発明者のセンスをあらわすものとしても、評価されているのだ。
もちろん、売れない本の著者でも、幾つかの作品を出していれば、それなりに纏まった印税が入ることもある。だが、今後の生活の保証はできない。やはり、「印税生活」というからには、ヒットしていないとならない。黙っていても、銀行に印税が次から次へと振り込まれてくるようになると、それはもう立派な「印税生活」ということになる。
それはサラリーマンにとっては、まさに憧れの生活として映る。大学の教授にしても本当は、それこそが密かな楽しみなのかもしれない。家庭の主婦にとっても、「印税生活」は心地好く響く言葉だろう。そして、作家の卵も、いまは切磋琢磨しながらも、そんな生活を夢みているに違いない。
「印税」とは違うが、やはり著者や作者に払われるものに「著作権(使用)料」というものがある。これは、作品が使用されるごとに、その作品の著者(作者)に払われるべきもので、作者はその権利を主張することもできる作家に限らず、イラストレーター、デザイナー、フォトグラファーや、また最近では、ゲーム・クリエーターなど、みな横文字の似合う職業になっているが、こうした自由業の人たちは、人から喜ばれる作品(文化)を新しく生み出す、創り出すゆえに、それが「文化の創造の対価」として、当然、高い著作権使用料を請求できるのだ。
そこで、先ほどのサラリーマンや主婦などは、「別の世界の人の話よねぇ」とぼやくことになる。ところが、だ。チャンスは平等にやってくる。たとえサラリーマンであっても、家庭の主婦であっても、この「著作権」は何らかの方法で得ることができる。それは「エッセー」でも「短編小説」でもよい。もちろん、「絵」でも「写真」でもよい。とにかく、何らかの作品である。著作権自体は、作品が出来上がると同時に発生する。
「そうかと言っても、自分の作品が買われるような芸術的な価値はないだろうし、これからも文化を創造するような自信はない」という声が聞こえてきそうだ。もちろん、作品の著作権は発生していても、それだけでは著作権料は入ってこない。しかしながら、ほんとうは作品の出来ばえは二の次である。
結局は、大衆がいちばん見たがっているものが、「作品の命」ということだろう。芸術的だとか、文化的な価値というのも、大衆がそのように認めたり、感じたりすることで生じる面がある。過去には無名だった画家や写真家の作品が、いまごろになって有名になったり、価値が出てくるということも、よくあるだろう。だから、その時代の共通の認識、価値観が、作品の芸術性自体をつくるともいえる。
まぁ、それはともかく、ここでは「芸術論」を展開しているわけではない。素人の作品でも、その価値が見出されれば、著作権使用料として、稼げる可能性もあるということだ。使い捨てカメラで写したものだとしても、それでたまたま「事故の決定的な瞬間を写すことができた」とか「誰が見ても戦慄を感じるような、心霊写真となってしまった」、はたまた「UFOをバッチリ撮ることができた」というだけで、その写真は新聞社や雑誌社から高額で買われることになる。それも著作権者として、写真を撮った人の名も同時に掲載されることがある。
撮影技術はこの際、問題ではない。報道写真のなかにはピンボケのものも随分あるが、それでも、それを越える決定的写真が無いかぎり、その写真の価値は保たれるのだ。この場合、写したのが、素人とかプロとかにかかわらず、たった一枚の決定的な(ピンボケ)写真は、後世に残るほどの価値が生じるのだ。
また、素人の手作り(芸術)作品で、見栄えが多少問題であっても、もしその作品のなかに、キラリと光るもの、あるいは何か大衆の心理をつかむものがあるとしたら、今後それは新しい芸術的価値として、世に迎えられるかもしれない。
そして、素人の作る作品は、なにも芸術的なものだけに限らない。「個人発明家」の手による小物発明なども、一つの作品である。それこそ、素人発想でも大衆から受けるような「ヒット商品」(発明)を作り出せば、こんどはそれを採用した会社から、アイデアの使用料とか、特許の使用料が払われるということだ。それが「ロイヤリティ(実施料)」である。
発明による商品が、グングンと売行きを延ばせていけば、それこそ「印税生活」ならぬ、輝かしい「ロイヤリティ生活」も夢ではない。実際に、そうした生活を体験した普通の主婦の話も、これまでに紹介してきた。彼女らは、実際に輝いていた。
もちろん、状況によっては、出願してから何ヵ月か経った後でも、構わない。ただ、出願してから1年半も経つと、特許の公開公報が自動的に出されるので、多くの人に発明の内容が知られてしまうことになる。そうなると、それをヒントに発明の権利に抵触しない形のものを、他人が考え出さないとも限らない。あるいは、無断で実施(模倣)されることもあるかもしれない。
いずれにせよ、個人よりも、資本力のある会社が、発明を実施してしまえば、それはアッという間に広がることになる。その後で「模倣されている」と気づいて、警告文(クレーム)を発して、仮に実施を抑えられたとしても、発明商品の新鮮さはもはや色褪せてしまうだろう。模倣をした会社から、後で補償金をもらえることもあるが、そのためには特許が登録されていないとならない。
ところが、この「特許の登録」までが長い道のりであると同時に、いろいろと通らなければならない難関もある。第一、お金も掛かる。個人発明家が、自分でこれらすべてを賄うのは、ちょっと大変。それでも、自分の発明を自分で製作・販売していくというのなら、それは「個人発明事業」の開業資金として、必要な経費と割り切ることもできよう。でも、ここでは、ちょっとした思いつきが小物発明として、ロイヤリティ収入になる方法を中心に述べているので、ここでもやはり「売り込み」というスタンスでありたい。
特に、小物発明では、売り込みを「特許の登録」になってから行うのは、避けたほうがよい。ただし、「登録された特許」の発明のほうが、断然、売り込みはしやすくなる。提案された企業にとっては、「登録された特許」の発明のほうが、リスクが少ないし、独占もしやすく、それだけメリットは大きいからだ。では、なぜ避けたほうがよいのか。
それは、登録までに掛かる特許手続きの費用が個人持ちになるので、出費がかさむ。そして、登録までに何年も掛かるので、その間に発明も斬新なものでなくなる可能性。さらに、登録まで待ってしまうと、類似品等も出回り、発明が色褪せる可能性もある。つまり、特許が登録されてからの売り込みを考えていても、登録までの間に、社会のニーズが変わったり、自己発明と同等かそれ以上の類似品が出回ったりした場合、せっかく登録されたとしても、もはやどこの会社も発明を買ってはくれないだろう。
そうなっても、登録までに掛かった「審査請求料」や「登録料」など、諸々の費用は個人負担のままである。そんなリスクを冒してまで、登録を待つことはない。しかも、「登録された特許」にいつまで固執していても、それが売れない限り、こんどはその発明の「維持費」まで、自分で特許庁に納めることになる。最初の登録料だけでは済まないのだ。
特許の権利を維持するためには、3年ごとに維持費を特許庁に納める必要がある。しかも、これは一律ではなく、3年ごとに倍になって増えていく。まず最初の3年分は、登録の際の登録料そのものだが、それでも14400円(大体、この位)だ。次の3年分では2倍の28800円、次の3年分で、さらにこの2倍・・・というような具合だ。だから、維持費は特許庁に納める3年毎の年金でもある。※金額は当時
これを払ってまで、売れない特許に固執する必要はないと思う。特許の権利がどの会社からも買ってくれそうも(あるいは使用料を払ってくれそうも)なければ、思いきってその特許は手放したほうがよいだろう。こんなに金を掛ける前にも、発明が売れるか売れないかの見極めをしておくべきだ。
また、書店の実用書コーナーなどに行くと、「アイデアを買う2000社」(実業之日本社)という本を見つけることもある。この本は、アイデアを求めている各分野の会社の住所などが掲載されており、個人発明家にとっては重宝する。再版される都度に、会社数も増えており、最近は2000社どころか、1万社近くにもなっているようだ。
公募情報を扱っている雑誌などにも、アイデアを求めている会社のページがあったりするので、売り込み先の選定には、さほど困らないだろう。自分で最初から、売り込み先会社を見つけるときは、中小企業を中心にするとよい。自社製品の開発のために、なにか斬新なアイデアを欲しがっていることがあるからだ。
こうして、20~50社ほどの売り込み先会社が決まったら、「発明アイデアの企画・提案書」を送付するための「売り込み会社の発送リスト」を作っておく。「会社名」「住所・電話(FAX)」「担当者名(分かったら)」「発送月日」「返信日」「売り込みの反応」「その他」などの項目を作って、表にしておくと、今後の売り込みの際に貴重なデータとなる。このように、自分でデータを作っていくことが大事。
最初から電話で、売り込みをする人もいるが、まずは「採用お願いの手紙」と共に「企画書」を送付したほうがよいだろう。手紙の冒頭挨拶は、「拝啓、貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。」のような、普通によく使われる文章で十分。あまり凝った文章を作ることはない。
たとえば、以下のようなフォームが一般的と思われる。
拝啓、貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。さて、突然のお手紙、誠に御無礼を致しますが、私は日夜さまざまな日常品の改良発明を試みている者です。この度、○○○○に関する改良品を考案しました。つきましては、貴社の新製品(アイデア品)としてご採用頂けないかとご相談申し上げる次第です。・・・
貴社ますますご隆盛お慶び申し上げます。突然お手紙を差し上げる失礼をお許し下さい。私は発明を趣味とする者ですが、この度、日常品の○○○をより使いやすくする発明(考案)をいたしましたので、お手紙で紹介させて戴きたいと存じます。・・・
などのスタイルで、あとは発明の概要について簡単に書いていく。ところで、手紙は、手書きがよいか、パソコンがよいか、ということだが、これはいまの時代、パソコンのほうがよいといえる。手書きのほうが味がある、温かみがある、などというのは、もう古い。なんといっても、パソコンは便利。一旦、定型の文章を打ち込んでおけば、あとは一部(会社名や日付)を変えるだけで、他にもいろいろと応用が効くからだ。
たとえ、売り込み先の会社に、社外アイデアの担当者がいたとしても、「何の因果で、こんな企画書を読まなくてはいけないのだ!?」と思うこともあるかもしれない。むしろ、社外アイデアの受付窓口があるということは、毎日、膨大な発明アイデアの提案書、企画書の類が、一方的に届いていることだろう。それを読みこなしていくのは酷である。
だから、全部を事細かに説明するのは、最初の売り込みではやめたほうがよい。では、どうしたらよいか。企画書を開いた途端に、「発明アイデア(試作品)の写真(あるいはイラスト)」「アイデアのメリット(ポイント)」「アイデアの分野」「従来の同じ分野のものと比べて、どこが斬新で優れているのか」「予想コスト」などが、パッと目に入るような構成になっているのが一番よいといえる。
少なくとも、いま述べた項目は大きめの文字で書く。会社にとって、アイデア品でいちばん興味があるのは、「低コストで高クォリティなもの」だから、その条件が一致していれば、これらの項目が目立つようにするのだ。
以上の項目を補足する「発明アイデアの概要」は、企画書とは別にした手紙のほうで簡単に触れておけばよい。もし特許出願中であれば、その旨も記しておくとよい。未出願なら、そのことはわざわざ記すことはない。このくらい簡潔にしたほうが、よく読んでくれるだろう。
それに、このように、企画書にアイデアの写真やイラストを付けておくと、それだけで目を引きつけやすくするので、別々にしておくよりも効果的だ。送る会社が多いと「アイデア企画・提案書」に貼りつける写真も、それだけ多く焼き増しする必要があるし、手間も掛かる。
そこで、いまはコンビニエンスストアに普及したカラーコピー機を利用するのがよい。そうすれば、最初に写真を貼った企画書をそのまま必要な枚数分だけコピーできるので便利だし、鮮明な写真付きの企画書が作れる。これなら剥がれる心配もない。
もし、その発明アイデアが人の体に着けられたりするものなら、人物モデルと一緒に写ったものも用意したい。せっかく写真があるのに、写っているのが試作品だけでは使用状態がよく分からない場合もあるからだ。人物と一緒に写っていると大きさの見当もつく。試作品を作っていないときには、イラストでその状態を表す。「アイデア企画・提案書」(新製品企画書)自体にアイデアを凝らし、盛り込むことが大事なのだ。
さて、送付する会社の住所は分かったとしても、会社の誰宛に送ればよいのか。先ほどの「アイデアを求める会社」などを載せている本や雑誌では、担当者名まで書かれていることがあるが、もし分からない場合には、「社外アイデア採用担当者様」とする。これも個人発明家はよく使っている。封筒には、返信用の切手を貼った封筒を折り曲げて入れておくのがエチケット。切手が無くても返信してくれる会社もあるだろうが、このほうが返信率が高くなる。封筒に「アイデア企画・提案書在中」などと書き添えておくのもポイントだ。
以前、売り込みをしていたときのことだが、会社からの返事で、とても早いものがあった。なんと、1週間ほどで返事が来たのであった。「ということは、あまり真剣に検討していないということかな?」と思い、手紙を開封すると、不採用ではあったが、その理由やアドバイスまでが手書きで書かれており、さらに類似商品のパンフなども資料として添えられていた。「個人からのアイデア提案を、こんなに大事にしてくれる会社もあるんだ」と、感動したものである。
遅いものでは、6ヵ月以上経ってからの返事もある。それどころか、忘れたころに返事をもらったこともある。そのときはもう1年近く経とうとしていたのだ。社内で長い間、検討をしていたということだった。もちろん、不採用。それにしても、よく返事をくれたものだ、と感心してしまった。
このように、返事が届くまでの期間については、それぞれの会社の事情もあるだろうし、本当のところ、なんともいえない。新製品の企画会議にあわせているのかもしれないし・・それでも、先も述べたように、だいたいは2ヵ月以内に返ってくると思ってよい。
もちろん、中には、返事を出さないという会社もあるだろう。このように、企画書を送った会社ごとに返信のデータ(返信までの期間、反応など)を作っておけば、次のアイデアの売り込みの際に活かせるはずだ。売り込みの反応は、実際、個人発明家にとっては有力なデータになる。
ちなみに、私がいちばん最初に売り込みをしたときは、まず一度に8社に送ってみた。 そのうち、2社からは返事がついにもらえなかったが、6社からはすぐにも、丁寧な返事を頂けた。よって、返答率は75%であった。
「アイデア企画・提案書」を読んで、アイデアに関心を持った会社は、さらにそれ以上の情報を知りたいと思うと、提案者(発明者)に連絡を入れることになる。そうなったらしめたもので、ここで、提案者はあらかじめ用意していた「特許出願書類のコピー」「発明アイデアの各資料」などを、さらに送るようにする。
「発明アイデアの各資料」には、「発明の効果を示す具体的なデータ」をはじめ、「アイデアを生み出すに到った経緯」「アイデア品を見たり、使った人の声(モニターの声)」「商品化された際のネーミング案」など、そのアイデアに関するもの全般の資料ということ。
こんどは会社のほうから興味を示してきたので、この段階では、最初の企画書では触れなかった細かいことも含めて、いろいろな情報を提示できるというわけだ。「モニターの声」という項目を例に出したが、これは知り合いや友人にアイデアを披露したときの感想、意見などを書いたもの。ほんとうに、わざわざモニターを募らなくてもよい。会社としては、そうしたモニターの声は貴重な参考になることもある。
私も、例の「ハイネック型のマフラー」や「ステンシルタイプの爪シール」などを提案したときに、周りの人の反応も参考までに伝えておいた。
]]>さらに「発明品の効用(参考用)」という項目でB5用紙大の紙面に発明アイデアのアピール文章を書いたものも、提案先の会社に送っていた。
いまから思うと、かなり細々とした感もあるが、それでも、返事を頂いた幾つかの会社から「企画書が見やすかった」とか、「こういうフォームは理想的です」など、思わぬお褒めの言葉も頂いたりした。当時、このように項目ごとに要点を記した「アイデアの提案書」は珍しかったということだ。
さて、売り込み先の会社が、発明に関心を示すと、その後はどうなるのか。まずは、その会社との間で、何回か手紙やFAX(あるいは電話)でやりとりがあるだろう。そして、商品化の話も具体的に進みはじめると、実際にその会社に赴くような機会も出てくる。その際には試作品を持参するとよい。試作品があるほうが、具体的な改良点や製品化の方向性もハッキリするだろう。決まったことは逐一メモを取るようにする。分からないことは確認できるまで聞き返さないとならない。
さらに、商品化の際の取り決めや、ロイヤリティ契約そのものについて纏めた「契約書」作成についても、着々と進むことになる。しかしながら、契約に馴れている会社と違って、個人は普通では契約書作成について、あまり詳しい知識はない。ここで相手(会社)のペースにはまると、一方的に不利な条件にされてしまいかねない。「アイデアを採用してくれるのだから、ここは相手に全部、お任せしてもよい」と考えがちだが、今後、&¥契約書に書かれたことが全てを決めるもとになるので、もっと慎重でもありたい。
大きな書店に行けば、契約書について書かれた良書もあるが、最初から勉強するのも大変だろう。そこで、個人発明の普及・啓蒙活動を行っている「(社)発明学会」などに相談するのも手だ。会員以外でも一般からの相談にも乗ってくれるし、契約時には立会人にもなってくれる。他には「(社)発明協会」という団体もある(高度な発明に関する相談にも向いている)。
こうした発明関係団体は、個人発明家にとって貴重な情報源になると同時に、発明生活のよきアドバイザーともなるので、入会をお勧めしたい。いずれにせよ、発明の売り込みを考えている人は、普段から会社との契約について、「(この発明に関して)どういう条件が考えられるか」「自分にとって不利になる条件、有利になる条件」などを纏めておくのがよい。そのうえで発明関係団体から相談に乗ってもらうのがベターだろう。
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